日経オートモーティブ 連載

軽く安くする材料・加工技術・第7回

炎も油もない
高速浸炭

変速機は高価な高強度部品のかたまり。高価になる一因は強度を上げ るための「浸炭」だった。大きな炉を950℃に保ち、大量のガスを充満 させながら、エネルギをどんどん使う。この浸炭を改良し高周波焼き入 れを組み合わせ、省エネ化することによって、大幅な原価低減ができた。

アイシン・エィ・ダブリュ
生産技術本部熱処理生技部主席研究員
大林巧治


 金属にはさまざまな熱処理法がある 。「強度が高い」「変形が大きい」 「処理時間が短い」など、特徴もさまざ まだ。当社も長い間、これらのメニュ ーから熱処理法を選んできた。どの熱 処理を選定するかにより、部品コスト も大きく左右されるのである。  2006年、当社は新しい熱処理法を開 発し、田原工場で稼働を開始した。まず真空浸炭し、減圧したまま徐 冷し、改めて高周波焼き入れをする。 こう書くと、一覧表にあるものから選 んで組み合わせただけに見えるかもし れないが、組み合わせに妙がある。当 社は表になかった新しい一項を付け 加えたものと自負している。「マイル ド浸炭プロセス(以下、マイルド浸炭 と呼ぶ)」と名付けたのはこのためだ。

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表●従来の表面処理法のすべて
ここには「マイルド浸炭」はない。