日経ものづくり 鉄人

売るのは心のぜいたく

 葉っぱを年間数億円売っている町 があると聞いて行ってみた。美 しい棚田が広がる徳島県は上勝町。 林業とミカン栽培に支えられてきたこ の町では今,料理に添える「つまもの」 向け葉っぱビジネスが最大の産業に 育っている。その主な担い手は94歳の おばあちゃんを筆頭に,実に平均70歳 代のお年寄りたち。これだけでも驚き なのに,ビジネス成功の秘訣がITの導 入というから二度ビックリだ。年金受 給者が納税者になったこの町は,これ からの高齢化社会のお手本になろう。

早い者勝ちだけどフェア
 料理に添えられているもみじやハラ ンなど,いわゆるつまものは主役では ないものの,とりわけ日本料理にとって はなくてはならない存在である。  外国人には,出された料理に添えら れた葉っぱを見て「これは食べられる のか」と聞く人が多い。外国人にして みたら,皿の上に食べられないものを 添えること自体,不思議なことかもしれ ない。けれど,日本人にとってはこれが 当たり前。四季折々の彩りに満ちた葉っ ぱが,料理を見事に引き立ててくれる。 案外,つまものがあるからこそ日本料 理が成立する,といったら大げさにす ぎるだろうか(図)。(以下,「日経ものづくり」2007年10月号に掲載

日経ものづくり 鉄人
図●アユの焼き物とつまもの
添えられているのは,赤柿葉,モミジ, 栗の葉,いが栗,青イチョウ葉,赤 南天,松葉。つまものが主役と見 まがうほど。
提供:立木写真舘

「日経ものづくり」の年間購読および一冊購入の申し込み
定期購読者限定サービス(無料):記事検索/PDFダウンロード