日経ものづくり 幾何公差

第6回:振れの公差

大林利一
いすゞ自動車 CAE・システム推進部
IDEPグループシニアスタッフ

ダイヤルゲージによる
検査をイメージ

 振れの公差は,データムを軸にし て部品を回転させたときの表面 の振れの度合に対するバラつきの許 容限度の領域を指示するもの。従って, 対象となる形体は,回転軸と輪郭線か ら作られた回転体形状となる。
 その幾何特性は「円周振れ」と「全 振れ」の2種類。詳細は後述するが, 前者は表面を構成する円要素の振れ を平面(2次元)的にとらえて規制し, 後者は表面全体の振れを立体(3次元) 的にとらえて規制する。
 どちらも,ダイヤルゲージを使って円 柱や穴の精度を測定することをイメー ジすると分かりやすい。そもそも振れ の公差は,ダイヤルゲージなどで検査 することを意図して指示されているの だ。このことは,JIS規格「TR B 0003: 1998(ISO TR 5460:1985 )製図-幾 何公差表示方式-形状,姿勢,位置及 び振れの公差方式-検証の原理と方 法の指針」でも確認できる。従って, 図例の解釈には意味を理解しやすい ようダイヤルゲージの絵を用いている。

日経ものづくり 幾何公差
図●半径方向への円周振れの指示
振れの公差は,ダイヤルゲージをセットして,データム軸直線を中心に対象を回転させたときのゲージの振れの 許容範囲と考えれば分かりやすい。この図の場合,データム軸直線Aに直交する任意の横断面における実際 の円周(測得線)が,データム軸直線A上に中心を持つ半径距離が0.2mm離れた二つの同心の円の間(公差 域)になければならないことを意味している。また,実際の円柱の直径は,寸法公差の指示に従って29.95~ 30.05mmの間に収まっていなければならない。