一介のベンチャー企業から年間60億円を売り上げ,その7割を海外で稼ぐまでに成長したアプリックス。同社が,ここ1~2年,年間売り上げに匹敵する合計約80億円もの資金を投じて注力してきたのが,携帯電話機向けソフトウエア・プラットフォーム「AMF(Aplix middleware framework)」だ。日本で培ったLinux上のソフトウエア資産を,世界の端末メーカーに広めようという壮大な事業である。

 このために同社は,筆頭株主のNTTドコモだけでなく端末メーカーのNECやパナソニック モバイルコミュニケーションズとの協業を深めた。さらにはLinuxを基にしたNTTドコモのソフトウエア・プラットフォーム「MOAP(L)」の立役者で,NECの携帯電話機向けソフトウエア事業のキーマン・吉本晃氏をAMF開発のために口説き落とし,自社の役員に招聘した。

 こうして同社は,創業者で会長の郡山龍氏と吉本氏の二人三脚で,プラットフォーム事業を推し進めてきた。しかし,2007年5月,大口の見込み顧客から,採用を2009年以降に延期することを通達され当面の投資回収が絶望的になった。これを理由に同社は同時期の業績説明会で76億円もの特別損失の計上を発表した。以下,2007年5月に行われた業績説明会での同社会長・郡山龍氏の談話を,本誌が再構成したものである。