日経ものづくり 鉄人

たかが踏み台,されど踏み台

 高い所に手が届くように使うのが 踏み台。この,どこにでも見掛 ける踏み台に付加価値を付けようと考 えた企業がある。従業員わずか10数 人の,プレスを中心とした金物部品メー カー,東光機材だ。

 この会社のある兵庫県三木市は,昔 から金物の町として広く知られている。

 しばしもやすまず つちうつひびき・・・ 「村の鍛冶屋」という童謡の発祥の地 でもあり,鋸や金槌,鉋や鑿,釘や鎹と いった大工道具や工具をはじめ,鉈や 鍬,鋤などの農具を主に生産する。か の地にあって,東光機材は同じ金物で も建築金物を主力に据える。しかしご 多分に漏れず,その建築金物も中国や 韓国の低価格製品に押され,苦戦を余 儀なくされている。

 いつも言うことだが,いったんコス ト競争に巻き込まれたらもうおしまい。 安くされたらもっと安くすることの繰り 返しで,ほかがつぶれて最後まで生き 残った者が勝ち,となるまでの消耗戦 に陥るからだ。ところがどっこい,この 会社は違う。使う場所や使う場面に よって特別なものが必要になると,踏 み台に活路を見いだし,成功している のだ。

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図●東光機材の踏み台
標準品もなければ折り畳み式もない。すべてがオリジナル品。