日経ものづくり 事故

発電用の風車が基礎から倒壊
固定したはずのブレード角度に異変

2007年1月8日21時51分。青森県・東通村岩屋の風力発電施設「岩屋ウィンドファーム発電 所」(以下,岩屋WF)にある,風車25基のうちの1基が倒壊した(図)。幸い,けが人などの被 害は出なかったが,風車からの引き抜き力を受けてコンクリート製の基礎がせん断破壊した。 実は,この風車,3枚あるブレードの角度は風の抵抗を最も受けにくい状態だった。

 岩屋WFは2001年11月に運転を 開始した。総出力は3万2500kW(= 1300kW×25基)。風車はすべてデン マークのBonus社(現・独Siemens社) 製で,GFRP(ガラス繊維強化プラス チック)のブレードを3枚持つロータは 地上68mの高さに取り付けられていた。

 壊れた風車は,基礎が破壊して風 下側に倒れた。コンクリート製の基礎 を観察すると,アンカーボルト下端の 「アンカープレート」と呼ぶ部分の外周 側下端面から外周に向かっておおよそ 45°の角度でせん断破壊面を形成し, 外周主鉄筋に到達したところでその 界面において剥離したように壊れてい た。破面はほぼ平滑。擦れた様子はな かった。

 倒壊の際,発電機やギアボックスを 収納するナセルは時計方向に約110°, ブレードやロータ,ナセルを支えるタ ワーは同じく時計方向に約46°回転し ている。特にタワー本体には,倒 壊の衝撃によるフランジ部の損傷や変 形以外に,ナセルから16~30cm下の 辺りにブレードとの接触痕と見られる スクラッチ状痕やタワー軸方向全域に わたる漏油の痕跡が見られた。そして 3枚のブレードについては,1枚が原形 をとどめていたものの,残り2枚は中間 部で折損したり地面に突き刺ったりし ていた。

図●倒壊した風車
3枚のブレードのうち,原形をとどめるのは1枚だけ。