日経オートモーティブ 連載

軽く安くする材料・加工技術・第6回

本当はプレスでも造れる マグネシウム部品

Mg(マグネシウム)が軽量化に効くことは分かっている。問題は部品の 造り方。ダイカストにしてもチクソモールディングにしても、自動車部品 のような大型部品には向かない。これがプレスでも造れるということに なれば、用途は大きく広がる。

不二越
マテリアル事業部技術開発部部長
吉本隆志

不二越
機械工具事業部工具製造所精密成形部部長
高田哲彦


 Mg合金は、金属の中で密度が最も 小さい。また強度もそこそこにある。 その結果、比強度は、AZ31B(Mg-3% Al-1%Zn)で143、AZ91(Mg-9%Al-1% Zn)で154と、Al(A380)の117を大き くしのぐ(表)。
 リサイクル性、電磁波シールド性が あり、しかも美しいため、ノートパソ コンの筐体のほか、自動車部材への 採用が拡大してきた。自動車で最大の 用途はステアリングコラムの芯金で、 多くの自動車メーカーが採用してい る。それ以外にもシートフレーム、イ ンストルメントパネル、シリンダヘッ ドカバーなどの用途例があるが、“高 級車限定”の域を出ない。

ブレスで使いたい
 現在の加工法はダイカスト、射出成 形など、いずれにしても鋳造である。 どうしても欠陥を補修する、磨くとい った後加工が要る。また、厚み0.6mm 以下の薄肉に造ることは難しい。圧延 した薄板をプレス成形するという、鋼 やアルミではごく普通の成形法で部品 が造れるのなら、もっと用途は広がる はずだ。
 ところが、Mgは結晶構造が六方晶 である。Al(アルミニウム)やFe(鉄) のような立方晶金属と違って常温で塑 性加工することは難しい。温間圧延、 温間プレスする技術の開発が必要であ った。これは、温度管理、潤滑油の選 択など難しい要素が多い。

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表●各種薄板材料の物性値