日経ものづくり 鉄人

何でもくっつける教授

 金属同士,セラミックス同士,高分子同士であれ,金属とセラミックス,セラミックスと高分子,高分子と 金属であれ,何でもくっつけてしまう技術を開発した大学教授がいる。接着したいモノの表面に「分子接着剤」と呼ぶ化合物を分子1層分付与するだけで,同種材料でも異種材料でも分子結合でしっかりと接着する。

 その大学教授は,岩手大学工学部応用化学科に籍を置く森邦夫氏。私が研究室を訪ねた際,森教授が最初 に口にしたのが「接着の統一理論」という言葉だった。アインシュタインの相対性理論と同様,接着の理論も統一できる。接着という現象を整理し単純化した理論で統一すれば,余分な接着剤などを使わずに接着できるようになるというのだ。

 その理論の要ようてい諦は,接着現象を被着体間の結合エネルギではなく,被着体間の結合距離で考える点。このことは実は,熱力学や物理化学を専攻された方には大変なじみの深い「ギブスの自由エネルギ」から導ける。(以下,「日経ものづくり」2007年7月号に掲載

日経ものづくり 鉄人 図●接着したサンプル
上段左から,ガラスとシリコーン,エポキシ樹脂とシリコーン,EPDMとアルミ,PIとシリコーン,下段左から,ABS樹脂とアルミ,シリコーンゴムにめっき,SBRとステンレス,POMとNBR,PAとSBR,ガラスとアルミ。