日経ものづくり 幾何公差

第4回:形状の公差と包絡の条件

大林利一
いすゞ自動車 CAE・システム推進部
IDEPグループシニアスタッフ

真直度の公差域は
MMC/LMCの適用で変化

 幾何公差をうまく使いこなせない理由の一つは,「公差域」の理解が難しいことにある。「公差域に対する具体的なイメージ」を頭の中で正しく描けず,図面に対する要求や意図を幾何公差に置き換えられないのだ。今回からは,そうしたイメージを描くための手助けとなるよう,多くの例を示しながら幾何特性の使い方を解説する。

 今回解説するのは形状の公差である。幾何学的に正確な形状に対するバラつきの許容限度の領域を表すもので,真直度,平面度,真円度,円筒度,線の輪郭度,面の輪郭度の6種類がある。その中でも特によく用いる真直度と平面度について,どのように公差域をイメージし,解釈すればよいかを説明しよう。

真直度

 真直度(記号「―」)は,中心線や母線などがどれくらい正確に真っすぐな線であるべきかという,曲がりの度合に対する許容限度の領域を指示するのに用いる。円柱の中心線に真直度を指示する場合について見てみよう(図)。この例では,誘導形体となる軸の中心線の真っすぐさを規制している。本連載の第2回でも解説したように,誘導形体に真直度を指示する場合は,図のように軸の大きさ(φ5)を表す寸法線の延長線上に,公差記入枠から伸ばした指示線の矢を当てる。寸法補助線や外形線,中心線そのものに指示線の矢を当ててはならないことに注意しよう。(以下,「日経ものづくり」2007年7月号に掲載

日経ものづくり 幾何公差
図●円柱の中心線に真直度を指示
中心線の曲がりの許容度を指示している。実際の(測得)中心線は,φ0.02の円筒に収まり,かつ円柱の直径方向の大きさは寸法公差の指示によって4.99~5.01の間になければならない。