日経ものづくり 詳報

ジェットコースター事故はなぜ起きたか
車軸の壊れ方から推定するある可能性

沢 俊行●広島大学大学院機械システム工学専攻教授

 大型連休も終盤に入った2007年5月5日。大阪府吹田市の万博記念公園内にある遊園地「エキスポランド」のジェットコースター「風神雷神?U」で1人が死亡し,19人が重軽傷を負う大惨事が発生した(図)。その直後から,筆者は新聞やテレビをはじめとするメディアから取材を受け,今回の事故に関してコメントを出してきた。

 現時点で得られる情報だけでいえば,事故原因は「ナットを適正に締め付けていなかった,あるいは長期間の使用中に緩んだ」ことにあるのではないかと,筆者はにらんでいる。ここではその根拠をつまびらかにすると同時に,筆者の長年にわたる鑑定経験から原因究明の手掛かりを幾つか提供したいと思う。それは,同じ悲劇を繰り返さないために,一刻も早く真相を明らかにしてほしいと願うからだ。

大きく左に傾いた車両

 最初に,当時の状況を確認しておこう。事故が起きたジェットコースターのコースは全長約970m,最大高さ約40mで,乗客は立ったまま急降下や旋回などを繰り返しスリルを味わう。ジェットコースター自体は6両編成で,乗客の数は1両当たり4人の最大24人。最高時速は75kmに達する。

 5日午後0時45分ごろ,問題のジェットコースターは乗客20人を乗せて出発した。最初の下り坂をトップスピードで降りたところで,深刻な異変が起きる。前から2両目の車両で,進行方向左側の車輪を車体に固定する車軸内側のおねじ部分が折れ,ナットと一緒に落下したのだ。