雑誌 Cover Story

2020年のパワートレーン

メーカー6社の研究開発リーダーが語る

田野倉 力
2007/05/21 00:09
 
日経オートモーティブ 特集

日欧で強化される燃費規制が、2010年代初頭までに20%以上の燃費改善を要求し、メーカーの燃費改善努力は総力戦の様相を呈している。これから2020年までを見通すと、クルマのパワートレーンは大きな変貌を遂げそうだ。その近未来の姿を、完成車メーカー6社のパワートレーン開発責任者の言葉から導き出す。 (鶴原吉郎)




温暖化への対応で燃費規制は2020年に20km/Lに達する可能性がある。 日本メーカーも2015年度新燃費基準をにらみ、積極的に燃費改善に取り組むが、コスト増が悩み。 今後採用が見込まれる有力技術は、すでに欧州企業が先行しており、日本は後を追う立場だ。 日本がリードするハイブリッド技術も、欧米での普及は限定的なものにとどまりそう。 将来的な技術としては、HCCI燃焼、圧縮比可変技術などが有望視されている。

 燃費改善技術をめぐる状況が様変わりしている。本誌は3年前の2004年6月に発行した創刊号で「自動車技術これからの10年」を特集し、完成車メーカー6社の研究開発リーダーに燃費改善技術の方向を聞いた。しかしそのときは、摩擦損失の低減や運動部品の軽量化など比較的コストのかからない改善策を挙げるメーカーが多く、ガソリン直噴エンジンのような高コストの技術を採用しようとする回答は少なかった。
 しかし、今回改めて完成車メーカー6社の研究開発リーダーにインタビューしたところ、多くのメーカーが直噴技術を有力な燃費向上技術として挙げ、さらに連続可変バルブリフト機構のような複雑で高コストなバルブ制御技術に対しても、採用の機運が高まっていることが明らかになった。

日経オートモーティブ 特集
図●燃費向上トレンドと、その達成に必要な技術
日本の乗用車の平均燃費は、2004年度の実績で13.6km/Lと、1995年度に比べて約22%向上した。2015 年度新燃費基準を達成した場合の燃費改善率は23.5%で、完成車メーカー各社は目標年度の2015年度より 2 ~3年前倒しで達成することを目指している。この燃費向上トレンドが続けば、2020年の平均燃費は 20km/Lに近づくと予想される。左上の写真は、直噴エンジンやアイドリングストップ機構の採用で燃費を向 上させたドイツBMW社の新型「1シリーズ」、右下の写真はDaimlerChrysler社が「CLSクラス」に搭載した希薄燃焼のガソリン直噴エンジンの断面図。




―――ガソリンエンジンの燃費向上技術として有望視しているのは。

 連続可変技術というのが一つの鍵に なります。バルブタイミング、リフト 量を連続的に変えるのはもちろん、変 速機でもCVTや多段化といった連続 可変に近付ける技術の導入が進むでし ょう。可変圧縮比エンジンというの も、夢の技術の一つです。ただ、コス トの問題が残っており、実用化までに は、まだ時間がかかりそうです。




―――ガソリンエンジンで大幅に燃費を 向上させることを表明しました。

 当社では、2006年12月に発表した 「ニッサン・グリーンプログラム2010」 において、2010年にCO2排出量を現行 より20 %減らし、ディーゼルエンジ ン並みにしたガソリンエンジンを世界 で商品化することを表明しています。 その実現のために、4気筒エンジンで は直噴+ターボ、6気筒・8気筒エンジ ンでは直噴+可変バルブイベント・リ フト機構(VVEL)を組み合わせる予定 です。こうした大きなデバイスだけで なく、燃焼効率の向上や、摩擦損失の 低減など10 ~20の低減技術を組み合 わせていけば、ガソリンエンジンでも 燃費を3 ~4割向上させるポテンシャ ルはあると考えています。




―――ガソリンエンジンの燃費向上技術 として、可変バルブリフト機構や、直 噴エンジンが注目されています。

 可変バルブリフト機構は、将来的に はかなり普及する技術だと考えていま す。まだコストが高いので、小排気量 エンジンにまですぐ載せるというわけ にはいきませんが。一方のガソリン直 噴エンジンですが、私自身は、やるな ら希薄燃焼だと思っています。他社は ストイキ(理論空燃比)で実用化してい ますが、これだと燃費向上の「取り分」 が小さい。ただ、希薄燃焼だとNOx 対策が問題になりますから、そのメド が立ってからの実用化ということにな ります。




―――2007年3月に発表した長期ビジョ ン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣 言」で、2010年代初頭にガソリンエン ジンを一新することを発表しました。

 現行の「MZR」エンジンは、2002年 から搭載し始めました。約10年で一新 することになります。新エンジンにつ いてはまだ明らかにできませんが「か なりの規模で変えざるを得ない」と言 っておきましょう。




―――燃費改善の柱となる技術は。

 ガソリンエンジンの燃費改善でまず 挙げられるのが吸排気のバルブ制御技 術です。一方で、ベースエンジンの地 道な改良も続けます。ディーゼルエン ジンは、どれだけ投入できるかにかか っています。また、もう一つの核にな る技術が変速機です。欧州で普及して いるAMT(Automated Manual Transmission) のようなものを検討している ところです。




―――日欧で相次いで強化される燃費規 制についてどう見ていますか。

 すごくハードルの高い規制だと思い ます。まず欧州についていうと、現在 欧州向けの小さい車種がありません。 ですから、ダイハツ工業から「ブーン」 のOEM供給を受け、「ジャスティ」と して販売することで平均燃費を「薄め る」ことはすでに発表している通りで す。欧州の規制については、日本の自 動車工業会から、日本の燃費規制と同 様に車両重量のランク別にしてはどう かと提案しており、欧州自動車工業会 も検討に入ったと聞いています。



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