日経ものづくり 幾何公差
第2回:3平面データム系と幾何特性記号

大林利一
いすゞ自動車 CAE・システム推進部
IDEPグループシニアスタッフ

データムの優先順位には
組み付けや検査の順序を反映

 規定の部品を使っているのに,組み立ての順番を間違えたばかりに,部品がうまく取り付けられない―読者にもこういった経験はないだろうか。これは,組み付け順序が公差に影響を与えているからだ。

 こうした組み付け順序や検査の順序を幾何公差の設定に反映するのが「データム系」。優先順位をつけた二つ以上のデータムを組み合わせて用いるデータムのグループのことで,その設定には十分な注意が必要となる。

3平面データム系

 データム系の中でも,互いに直交する三つのデータム平面によって構成されるもののことを「3平面データム系」という。

 3平面データム系に用いるデータムは,その優先順位に従って第1次データム平面,第2次データム平面,第3次データム平面という(図)。

 データムの優先順位は,部品の組立順や加工機への取り付け順などに置き換えて考えればよい。つまり,三つのデータムの中で一番初めに組み合わせる面を第1次,次に組み合わせる面を第2次,最後に組み合わせる面を第3次とするのである。冒頭のように,組み立て順によって組み付けられたり,組み付けられなかったりするのは,3平面データム系が製作や組み立て,検査に影響を与えることを暗示している。

 3平面データム系は,一般的に位置の公差(後述の位置度公差や輪郭度公差)を指示する際,その部品の動きを固定するために用いる。3次元空間内での移動と回転という六つの自由度を拘束するよう設定するのだ。

日経ものづくり 幾何公差
図●3平面データム系の指示例と解釈