日経ものづくり 特報

一つ,多重安全系の機能をいかなる場合にも確保するために,制御棒駆動用水系とコレットフィンガ制御用水系は別系統にせよ。
一つ,事故隠しを見逃した経済産業省検査官の技術力向上プログラムを具体化せよ。
一つ,従来審査では想定していない複数の制御棒の同時引き抜けを検討事項にせよ。
一つ,人為ミスを誘う深夜作業は禁止せよ。

 2007年3月15日,北陸電力志賀原子力発電所1号機で制御棒の異常作動に起因して発生した「臨界事故」が 隠蔽されていた事実が発覚した。それに続き,臨界事故には至らなかったものの,同様な原因で,東北電力女川1号機と中部電力浜岡3号機,さらには東京電力福島第二・3号機と柏崎刈羽1号機でも制御棒の異常作動が発生していたことが公表された。

 いずれの事故あるいは異常事象についても,まだ全容が解明されていないため,あまり断定的な記述はできないものの,幾つかの共通点が見いだせる。それは,(1)深夜の作業中に発生した(2)手順書の記載内容の誤り,あるいは人為ミスがあった(3)抜け落ちた制御棒は2本ないし3本と少数で,いずれも炉心周辺に配置されていた(4)制御棒引き抜き制限が正常に機能しなかった(5)D制御棒の誤作動を防ぐためのフェイルセーフ設計になっていなかった―などである。