NECは,塗布によって形成するトランジスタに,キャリヤ移動度が高いことで知られるカーボン・ナノチューブを用いる技術を開発し,詳細を明らかにした。同社の発表内容を聞いたプリンタブル・エレクトロニクスの関係者に大きな衝撃が走った。キャリヤ移動度はSi並みに高いからだ。課題となっていた電気特性を一気に向上させる可能性が出てきた。

 プリンタブル・エレクトロニクスは印刷技術を用いて形成した電子部品である。製造コストや重さを低減できるほか,機械的に曲げられるといった利点がある。その一方で,LSIや液晶パネルといったSi技術を使った素子と比べてスイッチング速度が大きく劣る。このため,性能の低さには目をつぶってきた。NECの技術は,この常識を覆す可能性がある。