薄型テレビなどの色表示能力が向上し,自然界にある色をより忠実に表現できるようになってきた。撮影・記録から伝送,そして再生・表示まで,豊かな色空間を楽しめる環境づくりが活発化している。今回は,カメラの色空間とホワイト・バランスなどについて解説する。 (田中 正晴=本誌)

山口 雅浩
東京工業大学
像情報工学研究施設
准教授

 前回,人間の目をブラック・ボックスとして,波長に対する感度特性である「等色関数」を調べる方法を紹介した。しかし,この方法では実際の人の目の特性は分からない。本当の分光感度特性は,実験で求まった等色関数からCIE-XYZのときと同様に座標変換した形になっているはずだが,どのような変換かを決められないのである。今では,視細胞に含まれる色素や網膜の中心部に存在する黄斑色素,水晶体の吸収特性などから,実際の目の感度特性が解明されてきた。しかし,それはCIE-XYZ等色関数の標準化からずっと後のことである。