薄型テレビなどの色表示能力が向上し,自然界にある色をより忠実に表現できるようになってきた。撮影・記録から伝送,そして再生・表示まで,豊かな色空間を楽しめる環境づくりが活発化している。本稿では,こうした技術の理解に欠かせない色空間について解説する。 (田中 正晴=本誌)

山口 雅浩
東京工業大学
像情報工学研究施設
准教授

 最近,映像の色に関する話題が注目を集めている。ディスプレイの色表現能力,映像の色信号規格,デジタル・カメラやビデオ・カメラの色再現性など,色に関する仕様が製品のうたい文句となっている。また,Adobe RGBやxvYCCといったさまざまな色空間が話題となり,映像信号を処理するソフトウエアやハードウエアも新たな色空間への対応が進んでいる。本稿では,連載の1回目として,このような動向を理解するための予備知識になるように,色空間とはどのようなものか,RGBとXYZは何が違うのか,等色関数にマイナスが生じるとはどういうことか,といった疑問に答えることを目的に,その基本的な考え方を中心に解説する。