日経オートモーティブ 連載

軽く安くする材料・加工技術・第4回

複雑形状の部品を
冷間鍛造で成形

乗用車の車輪を支えるハブユニット軸受には軽量化の強いニーズがある。このニーズに応えるため、日本精工は高強度材を冷間鍛造で成形し、複雑な形状の部品を作る新工法を開発した。この新工法と、それを活用したハブユニット軸受について解説する。

日本精工 軸受技術センター 自動車軸受技術部
シャシ グループマネジャー
永井 健一
日本精工 生産技術センター 成形技術開発部
エグゼクティブ・チーフエンジニア
小林 一登


 エネルギ消費量の低減は、自動車部品の使用段階だけでなく、その加工段階においても重要な課題となってきた。このため、熱間鍛造に比べて加工段階で多くのエネルギを必要としない冷間鍛造が、最近注目されている。当社は自動車の車輪を支えるハブユニット軸受を製造しているが、この部品に冷間鍛造を適用して、大幅な使用エネルギの低減と軽量化を実現した(図)。
 本稿では、開発したハブユニット軸受と、加工に適用した新工法について説明する。

ハブユニット軸受とは
 まずハブユニット軸受について簡単に説明する。ハブユニット軸受は車輪を支持し、車輪を滑らかに回転させつつ、車輪によって車体を支えるための軸受で、走る、曲がる、止まる、というクルマの基本性能を支える非常に重要な部品である。そのために高い強度と信頼性が要求される。

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図●開発したハブユニット軸受(左)と従来品(右)
成形法を従来の熱間鍛造から冷間鍛造に切り替え、製造時のエネルギ消費量を低減し、軽量化を達成した。