日経オートモーティブ 解説

地球の温暖化が深刻化し、CO2削減要求が高まっている。これに伴って注目されているのがエンジンや変速機といったパワートレーン系の摩擦低減だ。直噴エンジンやCVT(無段変速機)のような派手さはないものの、摩擦損失を減らせば2~5%の燃費向上が見込めるだけに、完成車メーカーの関心も高い。

 「2~3年ほど前から、エンジンや変速機の摩擦低減に対する完成車メーカーの関心が急速に高まってきた」(NTN自動車商品本部ニードル軸受技術部開発管理G開発担当主査の阿部克史氏)
 「2007年に入ってほぼすべての完成車メーカーを回ったが、どこでも開口一番、燃費向上が話題になった」(日本精工執行役自動車軸受技術センター所長の満江直樹氏)
 軸受技術が、燃費向上のキーテクノロジーになりつつある。燃費向上の技術としては、直噴エンジンやハイブリッドシステム、CVT(無段変速機)などが脚光を浴びている。しかし、これらの技術は大幅な燃費向上が見込める半面コスト上昇も大きく、またエンジンや車両に大幅な設計変更が必要だ。
 これに対し、軸受技術の向上により摩擦抵抗が減らせれば、エンジンや変速機などの大幅な設計変更なしに「燃費を2~5%程度向上させることが可能になる」(日本精工の満江氏)。CVTの採用も、単独での燃費向上効果は8%程度と言われるから、この効果は小さくない。
 こうした完成車メーカーの要求に対応するため日本精工は、エンジンや変速機に使う軸受製品の摩擦損失を、おしなべて半分に減らすという目標を決めた。「2007年度の研究開発の方針として、ドライブトレーン(エンジンと変速機)の効率を10%向上させることを目指している。その実現のためには、摩擦損失を半減する必要があることが分かった」(日本精工の満江氏)ためだ。同社以外の軸受メーカーも、エンジンや変速機の摩擦を大幅に減らす軸受の開発・実用化に取り組んでいる。

日経オートモーティブ 解説
図●NTNのクランク軸用ニードル軸受(右)とカム軸用ニードル軸受(左)
両方をエンジンに採用すると、燃費を約3%向上する摩擦低減効果があるという。