日経オートモーティブ Key Person

日経オートモーティブ Key Person

ジェイテクト
常務執行役員

大道俊彦氏

1970年光洋精工入社。現在まで一貫してステアリング技術にかかわる。1999年ステアリング事業本部ステアリングシステム技術部長。2000年Koyo Steering Europe社に出向。2005年6月執行役員就任。2006年1月、光洋精工と豊田工機の合併によるジェイテクト発足と同時に執行役員に就任、同年6月常務執行役員。


 国内でステアリング最大手のジェイテクトは、油圧から電動油圧、電動まで幅広いパワーステアリングを手がけている。2008年度は、ステアリング事業で世界の30%(数量ベース)のシェアを目指す。同社に、電動パワーステアリング(EPS)の高機能化とステア・バイ・ワイヤへの展望について聞いた。 (聞き手は小川計介)

――ステア・バイ・ワイヤに向けての準備はできていますか?
 自動車メーカーが目指しているステア・バイ・ワイヤは、現在当社が実用化しているEPSやギヤ比可変機構(E-VGR)で、機能的には対応できると考えています。
 ステアリングの基本機能は、タイヤの方向を変えることです。将来的にEPSがステア・バイ・ワイヤに進化しても、この機能は変わりません。ただし、ステア・バイ・ワイヤで信頼性をどこまで高めるか、という議論はこれからです。
 もし、コラムシャフトの無いステア・バイ・ワイヤを実現するとなると、電源やECU、ケーブルを多重化する必要が出てきます。法規では電気系を何重化すれば良いとも決まっていません。
 また、電気系を多重化するとコストは増えることになるので、ユーザーにとってバイワイヤ化するメリットが無いと、現在のステアリングでよいという考えになってしまいます。
 コラムシャフトもすぐには無くならないと思います。ステア・バイ・ワイヤになったとしても機械的に作動するバックアップとして使える可能性があるためです。

―― 航空機はバイワイヤを導入しています。
 バイワイヤはステアリングを高機能化する可能性を持ったシステムですが、何にでも向いているシステムではないと思います。
 航空機は、専門の知識を持ち、訓練を受けたパイロットが運転するシステムです。運転中に電気系統に不具合が起こった時も、的確に対応できるようになっています。