日経ものづくり 工場安全
日経ものづくり 工場安全

『グローバル工場安全』は,生産現場における本質安全の基礎と応用を学ぶためのコラムです。2006年4月に労働安全衛生法が改正され,企業はリスクアセスメントの実施を求められることになりました。そのために必要な考え方や具体的な手法を紹介していきます。


第1回:日本の工場安全の問題点と展望

前田育男,関野芳雄,岡田和也
IDEC 規格安全ソリューションセンター

“安全後進国”からの脱却を急げ

 日本企業は,工場安全の分野で欧米企業に大きく後れを取っている―。信じ難い話かもしれないが,データは正直だ。『平成18年版厚生労働白書』によれば,重大災害(一度に3人以上の労働者が死傷・り病した災害)の発生件数は,1968年に集計史上最大の480件を記録してから徐々に減少してきたものの,1985年の141件を境に増加傾向に転じ,2005年には265件に達した。休業4日以上の死傷病者数や死亡者数は過去最少を更新し続けているのに,である。重大災害の未然防止を重視し,それを実現しつつある欧米企業とは大きな差があると言わざるを得ない。
 従来,一般消費者や経営者の間には,日本企業の製品は安全・高品質であり,その製品が造られる工場でも安全性が十分に確保されているというイメージが定着していた。だが昨今,工場での爆発事故や火災が相次ぎ発生している状況は,実情が決してそうでないことを示している。