日経ものづくり 詳報

資源採掘現場発
ものづくりに求むパラダイム転換

 火事などの災害時に町の人たちに知らせる鐘楼の青銅製釣り鐘,神社の屋根の銅板,地下に埋設した電線,ステンレス鋼製の溝ぶた・・・。最近,銅やアルミニウム,ステンレス鋼といった金属の盗難が中国ばかりか日本でも頻発している。過去にも,金属不足による鉄や銅製品の盗難はあったが,神社の屋根や鐘楼まで狙われることは決してなかった。
 かかる金属の相次ぐ盗難は主に,中国の高度経済成長を最大のエンジンとする金属需給の逼迫と価格の急騰によるもの。実際,世界の17%を占める中国の金属消費量の伸びは年率12%を示し,世界の金属需要の伸びを2%に押し上げる。
 その中国では,自身が資源大国であるはずなのに,胡錦濤国家主席と温家宝首相のトップ二人が東南アジア,オセアニア,南米,中央アジア,そしてアフリカで精力的に資源外交を展開し,資源確保に奔走する。アジアや南米,アフリカとはインフラ整備とその他無償の経済援助を行う見返りとして資源を確保する一方で,オーストラリアとは資源と農業の抱き合わせでFTA交渉を進めるなど,したたかな資源戦略を見せている。

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