日経ものづくり キラリ輝く中小企業

エイベックス

変速機部品のエイベックス
6軸自動旋盤をフル活用

 自動車向け精密金属部品メーカーのエイベックス。μm単位の切削・研削加工技術を持ち,自動車向け自動変速機(AT)のスプールバルブと呼ばれる部品で高いシェアを誇る。スプールバルブとは,油圧制御装置の中で,油圧通路を切り替えて変速する部品のことだ。

スプールバルブに賭ける
 しかし,主力製品のスプールバルブにたどり着くまでには,紆余曲折があった。創業は1946年。加藤鉄工所としてミシンの針止めなどの製造を始めた。だが,1960年代半ばになると,主力のミシン部品の生産が台湾に移ってしまう。並行して製造していた8ミリ映写機の部品も,その後のビデオカメラの普及でストップ。やむなく自動車のブレーキ部品を手掛けたが,しばらくするとプラスチック製に代替された。「モータリゼーションの進展で需要が生じたほかの自動車部品で何とか食いつないだものの,長年にわたり好不況の波に翻弄され続けた」とエイベックス社長の加藤明彦氏は振り返る。
 悪循環を断ち切ったのは,主力製品をAT用のスプールバルブに絞り込んだ,1980年代半ばの決断だった。  それまでは,ミシンや8ミリ映写機部品で培った優れた切削・研削技術を持ちながらも強みを生かし切れていなかったが,AT搭載車の本格的な普及期に重なり,スプールバルブは同社の主力製品に成長した。現在では,売上高の8割強をスプールバルブで稼いでいる。

日経ものづくり キラリ輝く中小企業
●多度工場で稼働中の6軸自動旋盤

山元

薄板プレス加工の山元
蓄積データを金型造りに活用

 山元は,たたき上げの金型職人だった山元文夫氏が,薄板加工に挑戦するため,1973年に独立起業した。
 プレス加工向けの金型や,加工そのものの良しあしを大きく左右するのがクリアランス(打ち抜くときのすき間)。山元文男社長は創業時,真空管用の絶縁マイカ(雲母)を使って打ち抜き型を造るなどの練習を積んで,クリアランス技術を会得したという。

バリとの闘いで鍛えられる
 1970年代,まだ電子部品に使われる板ばねの主流が銅材だったころ,山元では耐食性,耐加重性の良さに着目し,メインの加工素材としてステンレスを選択する。これが事業を軌道に乗せるきっかけになった。
 オーディオ用カセットテープに続いてビデオテープの人気が高まり,パント(テープを支える機構)に使うステンレス製の板ばね加工の注文が舞い込んできたからだ。しかし,当初はバリとの闘いに悩まされる。「肉眼で見みても分からないが,バリがどうしても出る。そこで,床に新聞紙を敷いてプレス機を夜間に自動運転させ,朝になってどのくらいバリがたまっているかを確認して金型の良否を判定した」と,専務取締役の山元証氏は当時を振り返る。
 こうして何回も金型を造り直し,適切なクリアランスを追求していった。現在ではワイヤ放電加工を使ってバリ取りする方法が普及したが,研磨仕上げで部品を造った当時では,型を造り替えてクリアランスを改善するしかなかった。

日経ものづくり キラリ輝く中小企業
●クリックドームの設計作業
シミュレーションしながら形状を求める。