日経ものづくり 事故は語る

予期せぬ泡の大量発生で
食器洗い乾燥機から発火

2006年7月18日,福井県にある民家の台所でぼやが発生した。火元は松下電器産業製の食器洗い乾燥機。温風を送り出すファンユニットのモータから発火していたのだ。原因の一端は,過剰に発生した泡。この泡が,水気から遮断されているはずのファンユニットに浸入し,モータコイルと電圧端子の間でトラッキングを引き起こしていた。

 この事故に関して,松下電器産業は,発火の可能性がある製品の無料部品交換を既に実施している。東京ガスや大阪ガスにOEM供給していた分も含めて,対象台数は15万7986台に上る。
 福井県の事故発生直後,現地の消防は,製品評価技術基盤機構(NITE)に連絡を取った。工業製品による事故の可能性がある場合には,原因解明や再発防止を急ぐため,行政機関が「密に連絡を取る」(NITE生活・福祉技術センター技術業務課主任の弘田貴巳氏)ことになっているからだ。
 消防から連絡を受けた弘田氏らは,すぐに事故現場を調査し,食器洗い乾燥機が発火源だと確証した。冷蔵庫や棚も焼けてはいたが,食器洗い乾燥機の焼損が最も激しいのは明らかだった(図)。

洗浄水の痕跡
 NITEではまず事故品を分解し,より詳細な発火源を特定することから取り掛かった。すると,本体底部のファンユニットから激しく燃えた痕跡が見つかる。
 問題は,発火に至る原因だ。NITEでは,モータコイルや電圧端子の焼損が著しいことから,洗浄水や泡を媒介とした,コイルと端子の短絡(トラッキング)を疑った。そこで再現実験を行ったところ,トラッキングを確認できたという。
 この再現実験には松下電器産業の担当者も立ち会い,その可能性が高いことを認めた。そして同社は,冒頭で述べた無料部品交換へと踏み切ることになる。

日経ものづくり
図●発火した製品
本体と食器が溶着している。