日経ものづくり トヨタ生産方式の真髄と新展開

最終回

改善の進め方と着眼点

五十嵐 瞭
中部産業連盟 常務理事
主幹コンサルタント

これまでトヨタ生産方式の考え方と手法,および同方式の導入が十分でない業種/中小企業の製造部門や,工場の技術・間接部門を対象とした適用方法について紹介してきた。最終回となる今回は,同方式の考え方に基づく生産現場の改善の進め方と着眼点において,特に重要だと思われる点について紹介してもらう。  (本誌)


 本コラムは今回が最終回となる。そこで,今回は締めとして,トヨタ生産方式の考え方に基づく生産現場の改善の進め方と着眼点における11項目の要点を復習も兼ねて紹介しよう。

在庫削減で問題点を顕在化
 第1の要点は「物が工程間にたまっていないか。在庫を減らし問題点を浮き彫りにして改善対策を迅速化せよ」ということである。
 本連載の第1回で述べたが,在庫,特に仕掛品在庫を減らすことによって,今まで表面に出なかったいろいろな問題点を浮き彫りにする。その上で,あらゆる改善,すなわち品質管理,設備管理,工程管理,外注管理などの管理方法の改善や,段取作業や加工方法などの作業の改善を迅速に進める,というのが効果的な改善の進め方である。
 また,生産現場に停滞している仕掛品在庫を見て「なぜ,こんな所に,こんなに仕掛品がたまっているのか」と問い掛ける。それをきっかけに,その原因をその場で徹底的に追究して,対策を立て実施していくと大幅な加工原価の低減につなげていくことができる。
 例えば,ある加工工程の後に,仕掛品が必要以上に停滞しているので,その場で原因を調べてみると,工程間の能力がアンバランスであることが分かったとしよう。こうした場合,対策として能力バランスが見合うように作業編成をやり直すと,それによって人の削減ができ,結果として加工原価を低減できるというケースは珍しくないのである。