日経ものづくり 中国的低価格部品選定指南

第15回
ゴムが剥がれたヒートローラ
簡素さ故に見落とす熟練の技

紙などシート状の材料の搬送などに便利なゴムローラ。簡素な構造から中国メーカーがたくさん存在する。だが,そのシンプルさの中に複雑な工程を秘めている。部品の造り方の確認を怠って損失を被る日本メーカーの例が跡を絶たない。(本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


「いいかげんにしてください。なぜ,御社のゴムローラはこんなにも頻繁に壊れるのですか」
 ある日系メーカーの中国工場の会議室。私は中国のゴムローラメーカーの担当者を呼び出し,発生した不具合の処理についてクレームをつけました。
「すみません・・・。私たちも色々と対策しているのですが,もう手詰まりでして。正直どうしたらよいのか分からないのです」
「分からないって言われても。御社はゴムローラの専門メーカーじゃないですか。何とかしてくださいよ!」

シンプルな構造がケガのもと
 ゴムローラは,材料に熱や圧力をかけたり搬送したりする場合に,とても便利な部品です。複写機やプリンタなど幅広い製品に数多く使われています。
 例えば複写機の場合,給紙トレーから紙を転写ドラムに搬送し,トナーを熱と圧力で紙に定着させて印刷します。この搬送や定着工程にゴムローラを使います。両面印刷やソート機能を備えた機種では,紙を左右に搬送する必要があり,ここでもゴムローラが活躍しているのです。
 注意すべき点は,ゴムローラと一言にいっても,求める機能によってさまざまな材質や硬度のものを使い分けなければならないことです。例えば,同じ複写機でも,給紙工程に使うゴムローラには粘り気があり,かつ摩耗しにくいものを選びます。一方で,定着工程に使うゴムローラは100℃以上の熱と大きな圧力の両方に耐えるものでな

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