Donald A. Norman氏
認知心理学者

――最近,使い勝手(usability)が製品の成否を左右するとの見方がある。この意見に賛成するか。

 賛成したいところだが,実際は使い勝手がそれほど重視されているとは思わない。すごく面倒なことが起きたときには,気になるだろうが。私がずっと言い続けてきたように,一番大切なのは全体的な体験だ。

 ゲーム機の例でいえば,「プレイステーション 3」(PS3)のボタンが分かりにくくても,売り上げには全く影響しないだろう。重要なのは,どのゲームが一番面白いかだ。多くの人は,使い勝手は何とかなると考えている。製品を買った後で使いづらい点にいら立つことはあるが,批判するのは後から。

 人々の記憶に残るのは,例えば「Wii」でディスクを入れる向きを間違えたことよりも,全体的な体験だ。Wiiの熱烈なファンと話したことがある。時には最悪のゲームがあっても,彼女の熱が冷めることはない。彼女は使いやすさに関する世界的な権威だ。