揺らぐ電池の信頼性
機器メーカーにも責任の一端

 全世界で約960万個の電池パックの回収を余儀なくされたソニーエナジー・デバイス,片や国内で130万個を回収することとなった三洋ジーエスソフトエナジー。2006年に起きたこれらの一連の回収騒ぎは,Liイオン2次電池の信頼性を大きく揺るがしている。両社共に事故に至った原因はセル内での内部短絡であり,その火種は製造工程上にあったという。だが,ソニーの場合,公式発表をめぐって疑問の声が駆け巡っている。同社は2006年10月の会見で「製造工程でセル内の特定部位にNi微粒子が混入したことが発火の原因」としている。これに対して,電池技術者や専門家の多くは「それだけが原因とは考えられない。複数の要因があるはず」と推測する。

第1部<パラダイムの転換>
事故が相次ぐ今だからこそ
電池と機器の協調設計を

 携帯機器の主電源を担うLiイオン2次電池。その発熱や発火に伴う事故報告が相次いでいる。背景には,厳しいコスト低減を余儀なくされる電池メーカーと電池の安全性に対する独自の評価スキルを失った機器メーカーの技術者レベルでのコミュニケーション不足があった。消費者の電池に対する不安を払拭するためには電池メーカーと機器メーカーの協調が今こそ必要だ。

第2部<いざ萌えよ>
危うし日本の電池
新規材料で勝負を賭ける

 Liイオン2次電池で内部短絡による事故が多発した背景には高容量化に伴って,熱暴走に至った際の危険性が高まっていることがある。現行の正極材と負極材の組み合わせでは高容量化や安全性の面で限界を迎えている。新たな正極材や負極材を開発し,適切な電解液やセパレータを選択しながらより安全な電池を消費者に供給していかなければならない。電池メーカー,機器メーカー共に安全への基準をもう一段高める必要がありそうだ。

<特別インタビュー>
とてつもない電池を創ろう

 消費者の電池に対する不安を払拭するために電池メーカーと機器メーカーは今,何ができるのか――。Liイオン2次電池の基本技術を開発した旭化成の吉野彰氏と,かつてNTTで携帯電話機の発火事故の調査作業を取り仕切った山木準一氏。Liイオン2次電池の創成期において電池技術の進化に大きく貢献した二人に今後の技術開発のあるべき姿について聞いた。