日経ものづくり キラリ輝く中小企業

協成

フォトエッチング加工の協成
薄板難加工で差異化

 協成は,金属フォトエッチング加工を専業とする。現社長の白金満明氏の祖父に当たる創業者が,米国で学んだ加工技術を基に1963年に設立した。ICのリードフレームやブラウン管テレビのシャドーマスクの製造からスタートした。
 薄板・小物部品の代表的加工法であるプレス加工は,板厚0.05mmまでが限界。これに対してフォトエッチングは,板厚4μm~2.0mmまでを加工できる。この特徴を生かし,同社ではコンピュータ周辺機器や光学・通信機器などに使われるさまざまな精密機構部品を手掛けている。
 強みは,板厚4μmの限界厚に近い加工を難なくこなせる点。「位置決めや薬液の取り扱い,加工後の搬送方法まで,得意先に鍛えられて会得した」と白金氏は説明する。

月間200件を受注加工
 フォトエッチングは,写真技術を応用し,薬液を使って金属を化学的に腐食・除去して必要な形状に加工する手法である。例えば,2枚の写真原版の間に板材料を挟み込んで露光・現像・エッチングをすれば,2枚の原版が同じ形ならば抜き加工,また,1枚を形状写真原版とし,1枚を形状なしの原版にすれば,彫り込み加工(ハーフエッチング)ができる。
 精密加工に加え,プレス加工で必須になる金型を使わないことも大きな利点だ。金型製作には1個当たり数百万円の製作費が掛かるが,フォトエッチングで金型に相当する写真原版の製作は約3万円で済む。このため,「プレス加工で量産する前の段階で,試作・開発品を加工するニーズが相当ある」と白金氏は話す。実際,試作・開発品に限っても,月間200件ほどの依頼があるという。
 協成が長年,高いシェアを維持しているのがFDDのジンバル(回転支持部)と,HDDの読み取りヘッドを支持するアームのサスペンションの二つの部品だ。板厚0.05mmのステンレス鋼材をエッチングした後,曲げ加工してばね性を付与したもので,同様の機構はATM(現金自動預け払い機)の読み取りヘッドにも使われている。これらの機構部品の量産によって,1980~1990年代にかけて同社は一時代を築いた。

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●HDDのサスペンション
アームの支持機構に使われる。

東海合金工業

超硬合金の東海合金工業
強みは「素材から加工まで」

 東海合金工業の創業は1964年。兵庫県西宮市で超硬合金を造っていた松本角造氏(現社長の松本優造氏の祖父)が中部地区の将来性に着目し,愛知県尾張旭市に工場を間借りしたことに始まる。翌1965年には総代理店のトーカロイ商事を設立して本格的に受注活動を開始した。
 超硬合金は,炭化タングステン(WC)粉末を主成分に,コバルトや鉄,ニッケルなどの金属粉を結合剤として加えて焼結した素材。炭化タングステンの融点が2900℃と高く溶解が困難なことから,製法には金属粉末を押し固めて成形した後に焼き固める粉末冶金法が用いられる。
 超硬合金の素材を造る企業は,全国で30~40社。さらに部品加工まで手掛ける企業となると,東海合金工業をはじめごくわずかしかない。それ故,「素材と加工の両方を知るところが当社の強み」(松本氏)となるのだ。事実,加工部門から素材開発部門への情報のフィードバックにより素材品質の向上が,シームレスな連携により加工期間の短縮が図れる。
 そんな同社で最初に開花した事業がスプレーノズルの製造だった。30年以上も前のことだが,超硬合金の売り込み先を探していた創業者が,製鉄業向けに高圧水に耐える超硬合金製のノズル「デスケーリングノズル」を考案。これがヒットして事業基盤を築いた。しかしその後,スプレーノズルの主力が超硬合金から他の素材に移行するのに伴い,同社は製造をやめ設計だけを手掛けるようになった。

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●粉末金属を混合焼結する真空焼結炉