日経ものづくり 事故は語る

工場の安全の死角
お粗末な「簡易リフト」

ブリヂストンに見る安全対策の極意
工場内で荷を上に下に運ぶ「簡易リフト」。工場には大抵あるこの設備で,毎年何人もの死者が出ている。これほどリスクが高いのに,チェックは甘い。法律に違反する構造はざら。法律で決められた点検も守られていない様子だ。このまま放っておけば,悲惨な事故は繰り返されるばかり。直ちに,簡易リフトの安全性を高める必要がある。ブリヂストンが,その極意を明かしてくれた。



 簡易リフトに絡んだ事故が後を絶たない。国土交通省の調査によれば,過去3年間(2006年6月末現在)に発生した事故件数は20件にのぼる。うち,17件で死者が,3件で重傷者が出ている。
 事故に遭うのは,簡易リフトの「搬器」に荷を積み降ろしする利用者や簡易リフトを掃除する作業者などだ。利用者の場合,「かごの天井と2階床の間に挟まれた」「かご床と鉄製の柱の間に挟まれた」「リフトの荷台と扉の間に挟まれた」など,挟まれ事故が圧倒的に多い。
 一方,作業者の場合には,「かごと天井との間に挟まれた」「リフト天井部と側面の鉄枠に頭を挟まれた」「溶接機とリフトに首を挟まれた」といった挟まれ事故に加えて,「かごが3.2m下に落下し,男性従業員が下敷きとなった」「突然降下し始めたかごに巻き込まれ,1階まで落下した」などの巻き込まれ事故が目立つ。
 こうした事故の原因は主に,簡易リフトの不意の起動や搬器の落下などと考えられる。そして,ひとたび事故が起きると,20件中17件という数字が物語るように,死亡災害に至る確率が極めて高い。簡易リフトは荷を運ぶ便利な設備としての表の顔を持つ一方で,場合によっては利用者や作業者の命を奪う「凶器」としての裏の顔があることを十分認識しておく必要がある。