「東京―静岡間を1回の充電で走れるようになる」――。富士重工業はLiイオンを多く保持できる新しい正極材を用いるとともに,負極材にLiイオンをドープする技術を適用することで,重さ当たりのエネルギー密度を200Wh/kgに高めたLiイオン2次電池を開発した。これは,現在同社が開発中の電気自動車「R1e」に搭載している,正極材にLiMn2O4を用いたLiイオン2次電池のエネルギー密度の2倍に相当する。「現状で東京―小田原間の80km程度しか走行できない電気自動車の1充電当たりの走行距離を2倍に延ばせる」(同社 スバル技術研究所 プロジェクトジェネラルマネージャーの澁谷秀樹氏)という。

 一般的にLiイオン2次電池は,充電の際に正極材のLiがLiイオンとなり,電解液を経由して負極材のカーボン内に移動する。このため,負極にカーボン系材料を利用する現行のLiイオン2次電池は,正極材と電解液にLiを大量に含ませて高容量化を実現している。これに対して,今回はV2O5系の正極材を新たに採用する一方で,負極材にはカーボン系,電解液にはLiBF4 EC/DECとそれぞれ現在主流のものを利用した。