第31回 分解だって,ものづくりだ |
「開発の鉄人」こと 多喜 義彦 |
自動車リサイクルは,
自動車メーカーと対になるべき静脈産業。
金沢にある会宝産業は,近代化の先頭を走る。
外したエンジンを棚に置き,バーコードで管理する。
エンジンだけでなくシートを
再生して商品にする仕事も始めた。
将来は自動車の組み立て工程を
逆に流れるような工場の構想もある。
その周辺をリゾートにするなど夢は広がる。
自動車リサイクル業というと,ものづくりじゃなくって「ものこわし」だろうって言われちゃいそうだね。私はそうは思わない。確かに,やってることは「分解」なんだけどね。自動車という“原料”に手を加えて価値を上げる。手順は逆でも,立派なものづくりだよ。
家庭ゴミの回収って完全に自治体任せになってるでしょう。どうやってもビジネスにできないから“公”に頼るしかない。そう考えれば,自動車が民間で頑張ってるのは立派だ。ちゃんと収益が出てるんだからね。税金を使わないどころか,逆に払っている。
前にお話ししたニッチトップ企業の一つで,金沢に会宝産業という会社がある。巨大な近代的工場でね。こう言っては失礼かもしれないが,自動車リサイクル業とは思えない(図)。
自動車には有価物がいっぱい
日本の国内では毎年約500万台の自動車が用済みになるという。そのうち130万台は中古車として輸出する。残り370万台は解体することになる。
自動車には有価物が詰まっていてね,特にエンジンは高く売れる。しかも海外ですごい。エンジンなんて世界の常識では30万kmは使えるのに,日本では10万kmがいいところだ。だから世界から見れば宝の山でね。日本にはそれを狙った部品のバイヤーがどんどんやって来る。会宝も,ロシア,パキスタン,マレーシア,ヨルダン,米国,英国…。58カ国と取引があるけど,少ない方は年に1回とか,そういうところもあるらしい。
図●液体の抜き取り
別工程に分けて生産性を大幅に上げた。