日経ものづくり 特報

部品実装にもセル方式

実装行程を解体し、組立行程と融合


多品種少量生産を実現する手段として,広く普及したセル生産。だが,その適用範囲は組立工程に限られていた。その前にある回路基板の製造工程は長大なコンベヤで,柔軟性は低い。従って両工程は分断されており,その間に大量の仕掛かり品がある。そこでSUNXは,長大な回路基板の製造工程を解体し,組立工程と一体化することに挑戦した。

 工場の生産性を高める手法として,多くの企業が採用してきたセル生産。センサやレーザマーカなどのメーカーであるSUNXもその例外ではない。ただし同社では,単にセル生産を導入するだけでなく,セル生産の概念を「進化」させようとしている。
 「進化」とは,セル生産の考え方を従来より広い範囲に適用すること。電子部品をプリント配線基板に搭載する実装工程を,最終製品の組立工程と同じように「セル化」した上で,実装工程と組立工程を統合する(図)。セル生産方式の利点を最大限に生かそうとする試みである。
 この新しいラインがいかに画期的であるかは,同社の親会社の松下電工や,そのまた親会社の松下電器産業の生産革新担当の技術者がSUNXを視察に訪れていることがよく物語っている。目下,松下電器産業は納期短縮と在庫圧縮を目指した「NEXTセル生産革新プロジェクト」を進めており,グループ内外を問わず先進事例の発掘に余念がない。SUNXの取り組みは近い将来,松下電器産業の標準,さらには日本の製造業の標準になる可能性を秘めているのだ。

実装工程と組立工程に溝
 SUNXの新しいセル生産ラインの特徴は「組立工程と同じタクトタイムで,必要なときに必要なだけ必要な種類の回路基板を造ること」だ。一般に,組立工程と実装工程は物理的に離れており,全く異なる計画・タクトタイムの下で作業が進められている。このことは実装工程の制約からいって常識と考えられていた。
 同社はこの常識に挑戦した。組立工程と同じくらいの柔軟性を持つ実装工程を確立。タクトタイムをそろえ,両工程を物理的にも接続し,一つのセルに再構築した。具体的には,実装工程のうち「クリームはんだの印刷」「表面実装タイプの電子部品(チップ部品)の搭載」「リフロー」に関して,セル内に収まるような大きさの設備を導入することで,柔軟な実装工程を実現している。組立工程と実装工程が同期しているので,回路基板の仕掛かり品が発生しないという利点がある。
 ただし,実装工程と組立工程の「一体セル化」はそれほど簡単なことではない。正確には,セル化した実装工程と組立工程を統合することは簡単だが,その前に実装工程をセル化することが非常に難しい。

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図●電子部品の実装工程を取り込んだセル生産ライン
SUNXでは「インライン型SMTセル生産ライン」と呼ぶ。SMTは表面実装技術を意味する。