日経ものづくり 詳報

自動車用エンジンに転がり軸受
NTN,破断またはプレスで外輪を製作

10・15モード燃費を3%向上

 NTNは,自動車エンジン用の軸受を,従来の滑り軸受でなく転がり(ニードル)軸受とし,摩擦損失を大幅に減らす技術を開発した(図)。クランク軸,カム軸の両方が対象だ。
 実験結果より,回転トルクを約50%低減できることを明らかにした。机上検討の結果,クランク軸とカム軸の両方に使う場合,車両の燃費を10・15モードで約3%向上できる。特に起動トルクは滑り軸受に対して約90%低減する。滑り軸受は“回転して初めて油膜ができる”ものであるため起動トルクが大きく,それに逆らって回すスタータモータがどうしても大きくなっていた。
 クランク軸やカム軸には,クランクアームやカムなど,軸受より径の大きな部分があるため,通常の一体形軸受を軸方向から組み込むことができない。このため,転がり軸受は使えないというのが定説だった。
 また,特にクランク軸の場合は,外輪が厚いとベアリングキャップボルトの間隔が広くなりキャップにかかる曲げ応力が大きくなるため,外輪を極めて薄くする必要があった。このためには滑り軸受の方が有利だ。現に,この条件がさらに厳しいクランクピンやピストンピンは今回対象外とした。
 クランク軸用は外輪,保持器とも2分割して,軸を挟み込む構造とした。外輪は円環形に加工してから“カチ割り”加工で2分割する。材質は普通の軸受鋼「SUJ2」だが,安定して破断するという。破断面を負荷のかかる位置から外し,ニードルが外輪の継ぎ目を渡る音を低減した。保持器は円環形に削り加工で造り,二つを切断してからあらためて組み合わせた。

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図●NTNの転がり軸受
左がクランク軸用,右がカム軸用。