日経ものづくり 詳報

リチウムイオン2次電池の発火事故
ソニーが本誌の疑問に回答

再現試験で内部短絡を確認,金属粉は確認できず?

 本誌が2006年12月号で報じた緊急レポート「リチウムイオン2次電池発火事故」1)。ノートパソコン(PC)向けソニー製リチウムイオン2次電池セル(電池セル)を使った電池パックの発火事故が続発。同社はその原因を「金属微粒子による内部短絡」と説明した。これに対し,本誌は技術的な見地からその説明に疑問を抱く複数のリチウムイオン2次電池専門家に取材。その疑問点を基に質問を作成し,ソニーに回答を依頼した。

質問(1)
発火原因として金属微粒子の混入を挙げている。その可能性は全体のどれくらいの割合か。
「詳細は公表していない」

質問(2)
電池セル内部に混入した金属微粒子が十分小さければ,内部短絡しても発火はしないはず。すると,混入した金属微粒子は,想定以上に大きいと考えられる。だが,それほど大きな金属微粒子を見落とすほど検査工程に問題があるとは思えない。本当に金属微粒子の混入を確認したのか。
「特定部位に金属微粒子が侵入した場合,他の部位に比べて発熱が大きくなる傾向がある。このため,比較的小さな金属微粒子でも,ある稀な状況下で過剰発熱につながるケースがあると考えている。再現試験により,説明したような現象が起こり得ることは確認している」

質問(3)
電池セルの特定部位に混入した金属微粒子は発火につながる恐れがあるが,中央部に入った場合は電池機能が失われるだけで発火に至らないと御社は説明する。だが,どちらにせよ,内部短絡の恐れはあるはず。中央部への金属微粒子の混入が問題ないという理由はどのようなものか。
「現時点での解析に基づき,対象電池セルの一部に微細な金属粒子が入った場合,ある稀な状況下で電池セルが内部短絡を起こし,場合によっては過剰発熱や発火に至ることがある。また,このような事象が発生する可能性は,ノートPCのシステム構成の違いの影響を受けると考えている」