日経ものづくり ものづくりインタビュー

私が考えるものづくり

内田 恒二
キヤノン 代表取締役社長

ものづくり改革の仕上げとして
統合ITシステムを位置付ける

うちだ・つねじ
1965年4月キヤノンカメラ(現キヤノン)入社,1985年カメラ事業部カメラ開発センターカメラ開発試作部長,1987年同開発センターカメラ第一開発部長,1989年同開発センター所長,1994年カメラ事業本部宇都宮工場長,1995年カメラ事業本部レンズ事業部長,1997年カメラ事業本部副事業本部長(取締役に就任),1999年カメラ事業本部長,2001年イメージコミュニケーション事業本部長,2001年常務取締役,2003年専務取締役,2006年3月代表取締役副社長,2006年5月代表取締役社長に就任(現職)。

10年間続けてきた業務革新が,いよいよ終盤を迎える。 さまざまな部門での革新の成果を,ITシステムとして集約するのが現在のテーマという。 コア技術の維持発展と,内製化にこだわる一方で, その手段としての全社の情報共有システムに非常に大きな役割を期待する。 しかしあくまでもITは仕上げ。ものづくり自体の革新あってのシステムと考えている。

 キヤノンのコア技術は,光学です。ガラスやレンズの設計といった技術を基にして事業を展開してきたわけです。そのコア技術に基づいて,ほとんどの商品でキーユニットを内製化していることが,キヤノンの強みだと思っています。
 これは今も昔も変わりませんが,商品自体はアナログからデジタルへという大きな変化があって,ものづくりの形態も非常に大きく変わってきました。そこで一つ言えるのが,多くの事業部が連携して開発する商品が多くなってきたことです。特に,カメラの「フォト」と,プリンタや複写機などの「イメージング」との連携が進んできました。

10年間の業務革新をITシステム化
 画像の入力はカメラとスキャナと,それから動画のカムコーダがあります。入力した画像を出力するのがインクジェットプリンタやレーザ・ビーム・プリンタ,あるいは複写機。どの商品同士が連携しても高画質な画像処理が統一されて,ベストの品質を出せるようにしたい。ここで内部の連携プレーがうまくいき,キヤノンとしてのカラーマネジメントを確立してきました。このフォトとイメージングにまたがったデジタルの絵作り技術が,現在のキヤノンにとって一番のコア技術です。
 以前は事業別,製品別に開発が縦割りの組織で動いていました。御手洗(冨士夫氏,前社長)改革の10年間,「グローバル企業構想」の第2フェーズで,デジタル技術の応用が急激に進み始めたのです。そこで,将来を見通す形でデジタル化への対応を検討する専門委員会を組織して,全社的で横断的な協力関係を構築しました。おそらくデジタルの商品作りに関して,キヤノンは他社よりも全社統一された協力関係がより確立できているのではないかと思っています。