日経オートモーティブ Market Watching

米国で上級中型セダンの販売が矢速
小型と大型に挟まれて存在感薄まる

 米国で上級中型セダン市場が伸び悩んでいる。2006年10月の販売実績を見ると、ドイツDaimlerChrysler社のMercedes-Benz「Eクラス」がわずかに増えたのみ。そのほかは、トヨタ自動車のレクサス「GS430/450h」の-44.3 %を筆頭にどのモデルも元気がない。この現象の原因はどこにあるのか?
 第一の理由は、景気減速の懸念だ。自動車メーカーが想定している上級中型セダンの主要ユーザーの年収は、12万~15万ドル(1ドル115円計算で1380万~1725万円)。これは、米国人が車の購入費に当てる金額が年収の約1/3だというマーケティングの経験則に基づく。
 こうした年収の米国人は、大手企業であればVice President(部長級)以上、中小企業であればSenior Vice President(局長級)以上。だが、景気の減速懸念から、彼らに「生活の無駄を少しでも省こう」という自制心が生まれている。また、カンパニーカー(管理職などへの会社支給の車)に対して、企業側が対象役職を引き上げる傾向も見受けられる。
 第二に、モデル分類の旧態化が挙げられる。1980年代にMercedes-Benzが構築した小型、中型、大型の3サイズ構成に、他社は軒並み追従した。「Cクラス/Eクラス/Sクラス」に対抗して、ドイツBMW社は「3シリーズ/5シリーズ/7シリーズ」、ドイツAudi社は「A4/A6/A8」、そしてレクサスは「IS/GS/LS」とそろえた。
 だが、どのメーカーも上級小型セダンの質感、運動特性、パッケージングを進化させており、中型セダンの割高感が生まれている。富裕層は大型セダンの購入が自然であり、中型セダンが中途半端な存在になりつつある。

日経オートモーティブ Market Watching
販売が振るわないレクサス「GS430」