日経オートモーティブ Inside Story

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ホンダが2006年10月に部分改良した「ライフ」にオプション設定した「スマートパーキングアシスト」は、駐車開始位置やハンドルの切れ角をクルマが決めてくれ、縦列駐車や車庫入れがラクにできるというユニークな装備。その開発の裏にはペーパードライバーだった開発者ならではの発想があった。

 スマートパーキングアシストの開発を最初に手掛けたのは、本田技術研究所に入社したばかりの1年生技術者だった。同社研究員の酒井克博氏は「1995年に入社した1年目に、トレーニングのような感じで始めた研究でした」と振り返る。
 「研究所のリサーチ部門に配属され、何を研究しようかと考えたとき、同じ部屋では、レーンキープアシストやプリクラッシュセーフティの研究が進められていました。これからの時代は、安全がますます重要になるだろうし、高齢者も増えてくる。そこでドライバー支援の技術が鍵を握るのではないかと考えました」

クルマにパターンを覚えさせる
 ではどんな支援が必要か。実は酒井氏は学生時代、免許証は持っていたものの、ほとんどクルマの運転をしないペーパードライバーだったという。
 「だから車庫入れが苦手だったのです。そこで、それを手助けしてくれる機能を開発できないか、さっそく研究を始めました」
 最初に考えたのは、車庫入れや縦列駐車をすべて自動的にクルマがやってくれるシステムだった。まず、自分の運転操作をクルマに記憶させ、スイッチを入れるとその動きが再生されるようにしてみた。
 「クルマを停めるといっても、色々な場所があるので、様々な状況をクルマに記憶させ、その場に応じた駐車ができるようにするのがいいだろうと考えたわけです」
 ところが、そもそもペーパードライバーである酒井氏が、模範となる駐車パターンをクルマに記憶させること自体ままならない。なかなかうまく駐車できず何度もやり直すうちに、たまに一発で駐車できることがあった。

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図●2006年10月に部分改良した「ライフ」
スマートパーキングアシストを初めてオプション設定した。