日経ものづくり キラリ輝く中小企業

セリック

人工太陽照明灯のセリック
屋内での自然色再現に威力

 セリックは,人工太陽照明灯を初めて実用化したメーカーである。1984年,大手電機メーカーのエンジニアだった佐藤泰司氏(現セリック会長)が“太陽光を自分の手で作りたい”一心で独立起業。退職金で購入したマンションを担保に入れて運転資金を確保し,人工太陽照明灯の開発を目指した。光源を見つめ続けて失明しそうになるほどの苦心の末,約2年の歳月をかけて,1986年に1号製品の「XP300形」を開発した。

“太陽光を作りたい”一心で独立
 佐藤氏が太陽光に興味を持ったのは中学生時代。夏休みの終わりの夜に宿題の絵を描き,その絵を翌朝屋外で見たところ,思っていた色と全く違う色に見えた。その後,蛍光灯や白熱灯などの照明の光と太陽光とではスペクトル(波長ごとの光の強度の分布)が異なるため,それぞれの光の下では,同じものでも色が変わって見えることを知る。
 独立の直接のきっかけは,電機メーカー時代にキセノンランプと出合ったことだ。キセノンガスを管の中に封入し,放電して発光させるランプで,当時既に太陽光に最も近い光を出すことが知られていた。佐藤氏はこれを照明灯に使おうと考えた。もっとも「当時の仕事内容とは全く関係がなかったし,既存の企業ではアイデアを生かせる気がせず,自分で事業を起こすしかないと思った」(佐藤氏)。
 しかし,キセノンランプには多くの問題があった。強烈な紫外線や赤外線を発するため,至近距離では人間に向けることはできない。また,大規模な電源が必要。ガラスを薄くすると自分の熱でひびが入ってしまうという問題もあった。キセノンランプの用途が灯台や船舶のサーチライトなど,極めて限定されていたのはそのためである。通常の室内で照明灯として使うためには,それらの問題を解決しなければならない。

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●人工太陽照明灯
中央は「SOLAX500W」で,製品中最大のもの。