日経ものづくり 設計者のための解析入門

第11回 熱流体解析編(1)

流れの境界条件は流速と圧力で
熱の経路は計算前に整理

小型化・高集積化が進む電子機器では,熱対策が設計上非常に重要な問題となっており,熱流体解析ツールが電子機器の熱設計などに欠かせなくなってきた。今回から数回にわたり,熱流体解析を上手に利用するためのポイントについて解説してもらう。第1回は,流れと熱の境界条件の影響について。(本誌)

広野 友英
電通国際情報サービス 製造システム事業部 CAE技術部

 熱流体解析(Computational Fluid Dynamics:CFD)は,構造解析や機構解析などに比べ設計者への普及が遅れていた。だが,ここ数年でツールの操作性が大幅に改善され,比較的多くの技術者が容易に利用できる環境が整ってきた(p.155の別掲記事参照)。
 とはいえ,適切な条件を設定しないと設計を誤った方向に誘導しかねない。そこで,ここでは設計者用の熱流体解析ツールを念頭に,それを正しく利用するに当たって気を付けたい点について紹介する。

真の状態と設定可能な条件
 構造解析において荷重・拘束条件によって解析結果が異なるように,流体解析でも境界条件次第で解は全く異なったものとなる。妥当な解を得るには,境界条件を適切に設定しなくてはならない。ここではまず流体にのみ着目して,境界条件の設定とその影響について考える。
 密閉された空間のモデルを除外すれば,流体解析のモデルには必ず流体が流れ込む面と流れ出す面が存在する。解析に当たってはこの二つの面に境界条件として圧力または流速(あるいは流量)のいずれかの物理量を設定することになる。では,その違いを流体現象の基本ともいえる円管の流れの解析で見てみよう(図)。

日経ものづくり
図●円管内流れのモデル
ここでは境界条件として流入口に0.2m3/分の流量条件を,流出口に大気圧(ゲージ圧0Pa)の圧力条件を設定した。