日経ものづくり 業務改革/改善のためのABC

新シリーズ
業務改革/改善のためのABC

第1回
業務と戦略のひも付けで
現状を定量的/網羅的に把握

佐藤 俊行
IBMビジネスコンサルティングサービス
戦略コンサルティングサービス

企業活動を細かな活動の単位に分割し,活動ごとのコストを計算するABC。業務改革/改善やリスク管理などさまざまな観点から現状業務の把握がますます重要になってきている昨今において,それを効率的かつ効果的に実行するのに有効な手法だ。今回から4回にわたり,その意義とそれを利用した業務改革/改善の方法を紹介してもらう。(本誌)

 従来,企業では,競合他社との差異化を図るためにオペレーション機能における業務の標準化や大規模な情報化を推し進めてきた。その主眼となっていたのは,長期的な視点からのコスト競争力の強化である。しかし,昨今では経営戦略の寿命が極端に短くなってきており,短期間で飛躍的な成長を目指す企業にとっては,そうした特別な業務プロセスや情報システムが逆に企業の変化を阻害する要因になってきている。
 そのため,多くの企業が「持たざる経営」を目指して,コア業務を含まない機能を中心に外部委託や外注化を行うといった業務改革/改善を進めている。
 そして,そうした業務改革/改善を進める場合の典型的な手順が図である。すなわち(1)自社の目指す姿として人的資源を集中させるべきものを確認する(取り組みの方向性の確認)(2)現状業務の調査を通じて事実を把握する(3)現状業務の分析により両者のギャップをあぶり出す(4)ギャップに焦点を当てて改革/改善機会の抽出を行う(5)改革/改善の施策を策定する―――というパターンである。
 だが,こうした業務改革/改善をいざ開始してみると,将来の姿をイメージしながら取り組みの方向性を検討する作業は楽しいが,現状を把握するのは地道で根気が要ることに気が付く。企業で発生している多種多様な業務を時系列で一つひとつ確認するやり方だと,気の遠くなるような多量の時間が必要になることが分かる。もっと効率的に現状を把握する方法はないのか―――そうした声が後を絶たないのはそのためだ。

日経ものづくり
図●業務改革/改善の取り組みにおけるアプローチ例