日経ものづくり 中国的低価格部品選定指南

第11回
モータのコストは半減できる
怖いのは性能と寸法のバラつき

モータを中国で調達して得られるコストメリットは大きい。一時期よりも性能が向上し,ラインアップも申し分がない。ただ,品質の細かなバラつきがあることも事実。それに気付かずに大量生産し,損失が拡大するリスクもある。(本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


 駆動系のキーデバイスであるモータ。この部品もまた,今では中国で簡単に調達できるようになりました。価格も日本製モータの1/2という製品も珍しくないほどです。
 中国にはモータメーカーが無数に存在し,多くは品質管理の国際規格であるISO9000シリーズの認証を取得して良い設備も備えています。しかも,彼らは売り上げを伸ばそうと日本や欧米のモータメーカーの売れ筋を調べ,それをまねてモータのラインアップを増やしてきました。その結果,選択肢が広がり,顧客は使いたいモータを高い確率で見つけることができます。
 実際,私もこれまで多くの種類のモータを中国から取り寄せて試験してきました。その結果,ほとんどが日本メーカーの製品とほぼ変わらない性能や寿命でした。モータを中国製に切り替えることで得られるコスト削減の効果は相当大きいといえます。
 ただし,品質が向上したという事実を過信してはいけません。ほとんどの製品で品質が改善されたとはいえ,中国のモータメーカーの製品には,まだまだ品質にバラつきがあることは否めないからです。調達する際には,十分な検査を実施しなければなりません。
 しかし,分かってはいても,実際には多忙や手間がかかりすぎるといった理由で,ついつい検査を怠ることがあります。私が日系メーカーの中国工場でコンピュータ関連製品を生産していたころ,こんな問題に直面しました。

「MTBF」の達成に腐心
 製品の寿命を保証する一つの指標として「MTBF」があります。これは「平均故障間隔;Mean Time Between Failure」の略で,ある製品を顧客が使い始めてから,どれくらいの時間で故障が発生するかについて平均値を示したものです。メーカー側が顧客の使用条件を想定し,その条件に基づいてMTBFを設定します。
 例えば,ある製品を毎日10時間,5年間続けて使えるようにしたいと思えば,「10時間×365日×5年=1万8250時間」のように計算します。この場合はしばしば,多少の余裕を見込んで約2万時間をその製品のMTBFの目標として設定し,これを満たすような設計を考えることになります。

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