日経ものづくり トヨタ生産方式の真髄と新展開

第10回

管理・間接部門への展開

五十嵐 瞭
中部産業連盟 常務理事
主幹コンサルタント

生産現場への導入がますます進むトヨタ生産方式だが,その考えは管理・間接部門にも十分に展開できる。今回からは非製造部門にトヨタ生産方式を導入し,改革を行っていく考え方について解説していく。特にジャストインタイムの各種手法を実践することは,非常に効果的だ。(本誌)


 本連載も,10回目を迎えることになる。これまでは,トヨタ生産方式の概要と考え方・思想,具体的な手法の解説,そしてトヨタ生産方式を適用しにくい生産タイプの製造業を対象に,どのように同方式を適用していくのか事例を交えながら説明した。
 今回からは3回にわたって,工場の中でも非製造部門である管理・間接部門を対象として,業務効率化のためにトヨタ生産方式の手法と考え方をどのように適用,展開させたらよいかについて延べる。今回は,管理・間接業務へトヨタ生産方式を展開させる一般的な手法について記述し,この内容を受けて次回は技術部門(開発,設計,生産技術など)を,次々回は管理部門(生産管理,資材購買,品質管理など)を対象にして,事例を交えながら詳細に解説する。

管理・間接部門に潜む多くのムダ
 まず,工場の管理・間接部門が抱える問題についてまとめてみる。現在,主な問題としては次のようなものが挙げられる。
問題(1) 情報の共有化や業務の標準化が十分実施されていないため,仕事が個人任せになっている。
問題(2) 個々人の仕事量(仕事の負荷)がつかみにくく,余力があるのかないのか分かりにくい。

日経ものづくり 特報
図●トヨタ生産方式の管理・間接部門への展開手法
管理・間接部門の業務を効率化には,ジャストインタイムの各種手法を適用するとともに,それを支えるための多能工化を実践する。