日経ものづくり 特報

大学の技術,恐るべし

熱交換器,モータなど基礎技術に革新のタネ



2006年9月13~15日,科学技術振興機構,NEDO技術開発機構の両独立行政法人は東京・有楽町の東京国際フォーラムで「イノベーション・ジャパン2006―大学見本市」を開催した。日本全国から314の成果が集結,そこに企業や投資家が詰め掛け,熱心な“商談”が繰り広げられた。

 国内最大規模の産学マッチングイベントである「イノベーション・ジャパン2006―大学見本市」。会場は学会と同じメンバーがそろっているとは思えないほど商売っ気にあふれていた。
 とは言ってもそこは大学。熱交換器,モータといった極めて基礎的な機械要素に注目すべきものが目立つ。例えば車いすを出展しても,その駆動部という汎用的な機構の提案であり,商品そのものではない。木材を自在に曲げられる技術も基礎的な工法。表面に木をあしらうことの多い自動車や家電の設計者には気になる技術だろう。

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 東京理科大学は,極めて大きな熱流束(面積当たりの伝熱量)が得られる熱交換器のモデルを展示した(図)。熱流束は300W/cm2に及ぶと予想される。原子炉の燃料棒表面でも熱流束は100W/cm2程度で,これが現在のところ実用上最大の数字といわれるから,この3倍の能力があることになる。短時間なら5倍も可能だという。燃料電池車,電気自動車を駆動するインバータや,スーパーコンピュータの素子を冷やす用途を想定している。
 新しい熱交換器は気泡微細化沸騰という伝熱機構を使う。“2階建て”の流路が特徴だ。伝熱面に接して主流路に流体(多くの場合は水)を流す。ここまでは一般の熱交換器と同じだ。
 この上にさらに副流路を置く。副流路から下に向けて内径1mm以下,外径2~3mmという細いノズルを突き出す。ノズルから出る水が気泡を破壊し,膜に成長するのを妨げる。だから気泡微細化沸騰と呼ぶ。主流路,副流路共に幅10mm,高さ5mm,長さ100~200mmだ。

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図●熱交換器の原理
赤色が伝熱面,主流路の流れ(黄色)と,副流路の流れ(青色)は向きが逆だ。