日経ものづくり 特報

メカとエレの協調で
工場にも恩恵

3次元データは使えるだけ使う


写真:Ryan McVay/Getty Imges

機械(メカ)設計と電気(エレ)設計を連携させようという動きに,新たな展開が見られる。従来は開発期間の短縮や開発コストの削減など開発体制を改善することが連携の目的だった。その改善の対象を生産体制にも広げ,量産準備期間の短縮や量産コストの削減なども目指すというのだ。情報機器全般の開発・生産で富士通がこうした取り組みを進めている。同社のサーバ事業における事例から具体的な手法とメリットを探る。

 設計部門と生産部門の“壁”が,また一つ取り払われようとしている。その原動力は,機械設計と電気設計の協調。製品の開発段階において本来は別々に進めていく両者を連携させることで,生産体制の改善が見込めるのだ。
 さまざまな企業において,機械設計と電気設計をコンカレント化しようとする動きは,本誌2006年2月号の特報でも紹介した1)。背景にあるのは「開発期間を短くしたい」「開発コストを減らしたい」といった,開発体制に対する改善要求である。
 電装部品を搭載する製品の開発では,構想段階で決めた大まかな仕様を基に,筐体などの機械設計と電子回路などの電気設計を並行して進めた後,両者の成果物を試作段階で擦り合わせるのが一般的。ただし,このような開発体制では筐体と電子部品が干渉するなどの問題が試作段階で初めて分かることもあった。これらの問題を解決するためには,設計段階に戻って設計変更をすることになるが,こうした手戻りが多くなると,開発期間と開発コストに影響が出る。例えば開発期間が長引けば市場投入が遅れ,売り時を逃しかねない。開発コストがかさめば,損益分岐点を超えられなくなる可能性が高くなる。

日経ものづくり 特報
図●富士通のサーバ
(a)は筐体にプリント配線基板を取り付けた例,(b)は(a)の赤枠部分を拡大したもの。基板同士の間隔にはあまり余裕がないため,基板上の部品同士の干渉や,部品と筐体の干渉に気を付けなければならない。