日経ものづくり アイデアコーナー

回収が容易なリターナブル包装箱 【富士ゼロックス】

畳んだ箱を同じ大きさの箱にすっぽりと収める

 引越しの荷造りに使う段ボール。通常,業者から届いたときには折り畳んで何箱かまとめてひもで束ねてある。しかし大きいしひもが緩めば乱れるし,結構これが扱いにくい。もし折り畳んだ段ボールを同じ段ボールの中にしまえたら,乱れることはないし運びやすいし,メリットは非常に大きいはず。けれど,収納される箱と収納する箱が同じ大きさというのは,物理的に不可能なのでは・・・。
 その不可能を可能にした企業がある。富士ゼロックスと,環境に配慮した梱包材の開発/販売を手掛けるスターウェイ(本社東京)だ。引越し用ではないが,部品配送用に収納される箱と収納する箱のサイズを同じにすることに成功した。何はともあれ,図を見てほしい。
 両社で共同開発した謎の箱は,100回以上繰り返し利用できるという幅710×奥行き520×高さ410mmの「リターナブル包装箱」だ〔図(a)〕。図(b)は,底を内側に折り,ふた(上部フラップ)を開けてつぶした状態。これをまず,正面の中央に設けた折り目線(罫線)が内側に入り込むように畳み〔図(c)〕,側面同士がピタリと重なるようにする〔図(d,e)〕。
 繰り返しになるが,収納する側のリターナブル包装箱の大きさは幅710×奥行き520×高さ410mm〔図(a)〕。

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図●空き箱を畳む様子
(a)箱にした状態。(b)底を内側に折り,ふたを開けてつぶした状態。(c)正面の折り目線が内側に入り込むように畳み,(d,e)側面同士をピタリと重ねる。(f)畳んだ空き箱を畳む前の空き箱に収めた状態。なお,リターナブル梱包材は耐久性に優れるほか,?@スターウェイが開発した,RFIDタグ(無線タグ)を用いたトレーサビリティー・システム「ESP-take ?U」を導入し,リターナブル包装箱の回転率の向上や内容物の在庫/回収状況などをWeb上で管理できる?ARFIDタグの万一の破損を考え,箱のIDのバーコードを併記した?B2カ所に設けた託送伝票は縦型,横型の両方に対応する上,再使用時に簡単にはがせる?C出し入れしやすく丈夫な,送付票(A4判普通用紙)を入れるポケットを設けた?Dふたの合わせ目を面ファスナにするなど,ガムテープをはじめ副資材を使わない構造とした―といった特徴を持つ。(図中の数字の単位はmm)


ごみの出ない粘着ラベル 【アプティ】

のりとシリコーンをストライプ状に配置

 バーコードラベルや伝票ラベルなどに使う粘着ラベルは,ラベルの背面にのりが付いており,剥離紙からはがして対象物に張り付ける。剥離紙はごみになるだけなので,環境保護の観点からするとなくしたい。また剥離紙は,シリコーンを塗ることで表面材ののりとの剥離を容易にしているが,シリコーンを塗った面はつるつるしている。このため,作業現場などに落ちていると,その上に乗ったときに滑ってけがをする危険がある。
 そこでアプティ(本社横浜市)は,剥離紙側も表面材と同様にラベルとして利用できる粘着ラベル「両面サーマルラベル」を開発した(図)。ごみがなくなるとともに,一度に2枚のラベルが手に入れられるため,例えば1枚は品名などを表示したラベル,もう1枚はバーコードを表示したラベルとして利用する,などの運用が可能だ。
 ポイントは,2枚の表面材の接触面に,のりとシリコーンをストライプ状に並べて,重なったときは互い違いになるように配置したこと。これで,2枚の表面材は簡単にはがせるとともに,接着力も維持できることになる。
 ストライプ状に配置したのりとシリコーンの幅は,のりに比べてシリコーンの幅をわずかに広くしている。

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図●両面がラベルとして利用できる「両面サーマルラベル」
写真の例では品名の表示ラベルとバーコードラベルを一度に印字した。