日経ものづくり 中国的低価格部品選定指南

第10回
代理店の乱立が生む低価格
裏に品質問題と不安定な調達も

中国で半導体やそれを使った部品を購入する場合,日本よりも低価格になる可能性がある。代理店の数が多く,競争が激しいからだ。半面,半導体メーカーと代理店との結び付きは弱く,調達の安定性やトラブル対応に難点がある。(本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


 電気・電子製品のキーデバイスである半導体。最近,こうした付加価値の高い電子部品まで中国で調達しようとする日本メーカーが増えてきました。中国で半導体やそれを使った部品を販売するメーカーや代理店が増え,従来よりも入手しやすくなったことがその一因です。
 しかし,半導体を中国で調達する場合,半導体の機能面での品質のほかに注意すべきことがあります。半導体を発注して購入し,製品に組み込んで何か問題が生じたときの対応までを含めた全工程におけるサービスの品質に注意しなければならないのです。
 日本ではこうした品質にあまり気を使う必要はありません。メーカーから商社を介して代理店へ至るという半導体の販売ルートが確立しており,生産から販売,アフターサービスに至るまで,顧客に丁寧に対応するシステムが出来上がっているからです。しかし,だからこそ,半導体の調達を日本から中国に切り替えた途端,思いも寄らない問題に直面する日本メーカーが後を絶たないのです。

他の部品の命運を握る半導体
 私がかつて開発に携わったコンピュータ関連製品でも問題が起きました。私たちは心臓部に当たる半完成品を造り,日系メーカーや台湾メーカーの顧客に提供していました。販売は好調で,会社は受注の増加に伴って生産ラインを次々と増設し,生産量を増やしていきました。
 ところが,ある日,大口顧客である台湾系メーカーから「納入を止めてほしい」という依頼を受けたのです。私たちが造っていた半完成品は,機能的にはほとんど同じものなのですが,個々の顧客に応じて若干仕様を変えていました。出荷を止めた製品を他の顧客向けに引き当てるには改造が必要で,そう簡単ではありません。そのため,出荷停止になった半完成品は倉庫で眠ることになり,倉庫は一気にいっぱいになってしまいました。

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