日経ものづくり 詳報

TOTO,セルフクリーニングで新技術
水溶性ポリマが汚れと一緒に流れ去る

溶け方の制御は自由自在で,応用のすそ野に広がり

 新しいセルフクリーニング技術が登場した。水溶性ポリマと,ナノクラスタから成る透明なコーティング膜を利用したもので,水を流せば膜の上に付着している汚れを根こそぎ洗い落とせる。一見,光触媒膜が持つセルフクリーニング機能と似ているが,メカニズムは全く違う。超親水性を発現する光触媒では水が膜と汚れの間に入り込むのに対し,水溶性を示す新しいコーティング膜ではそれ自体が溶ける。つまり,汚れを浮かせて落とすのが光触媒で,自らが流される過程で汚れを道連れにするのが新しいコーティング膜というわけだ(図)。開発したのは,光触媒技術をリードしてきたTOTO。住宅設備をはじめ,自動車,車両など,さまざまな分野への応用が期待される。

光沢も与える
 TOTOによれば,新しいセルフクリーニング技術の当面のターゲットは使用中の便器だ。「長年使っていると表面がざらつき,汚れが付きやすく,そして落ちにくくなる」(同社事業開発部生活用品事業開発グループ技術チームリーダーの藤井寛之氏)。そこに新しいセルフクリーニング技術を適用すれば,水洗のたびに汚れが膜と一緒に流れてくれる。掃除の負担が軽くなるというわけだ。
 それだけではない。平滑な新生面が露出し光の乱反射を抑えてピカピカになる(図)。実際,経年劣化を想定した処理を施した便器に新しい膜をコーティングすると,光沢が回復し,人の目には十分にピカピカと映る。

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図●新しいセルフクリーニング技術の概要
経年劣化した便器の表面はざらつき,汚れが付きやすく落ちにくい(下)。そこに新しいセルフクリーニング技術を適用すると,表面には透明な膜ができる。水を流せば膜が溶けるため,膜の上の汚れも一緒に洗い流せる。さらに,流れた後には新しい面が露出しピカピカになる(上)。