日経ものづくり キラリ輝く中小企業

不二機販

金属表面加工の不二機販
ショットピーニングで熱処理

 不二機販は,金属表面加工技術「WPC処理」の開発で知られる企業だ。WPC処理とは,40~100μm程度の金属微粒子を圧縮気体に混ぜ,秒速80m以上の速さで金属部品などの表面にぶつける技術。一見,表面層に圧縮残留応力を導入し耐疲労特性を改善したり,加工硬化を利用して表面の硬さを高めたりする,いわゆるショットピーニングのよう。しかしその実,ただのショットピーニングではない。「金属表面で急熱/急冷が瞬時に繰り返され,熱処理効果や鍛錬効果が得られる」(同社社長の宮坂四志男氏)という特殊な技術なのだ。
 それでいて,通常のサンドブラスト装置が使える。この簡便さが受け,国産自動車メーカーや大手自動車部品メーカーのほとんどがこの技術を採用。今では工作機械メーカーや工具メーカーなどにも広まり,ライセンス供与先は約120社に及ぶ。

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●WPC処理
粒径40~100μmの微粒子を秒速80m以上のスピードで噴射する。


エイブル

小型培養装置のエイブル
バイオとメカトロの融合に強み

 生物工学をはじめ食品や医療などさまざまな分野で脚光を浴びているバイオ技術。その研究・開発にはメカトロニクスの技術が不可欠である。例えば,小型の培養装置が使われる場面は多い。培養液の温度や酸性度,酸素濃度などを制御し,発酵・培養に最適の環境をつくり出す装置だが,機械や制御の技術がどうしても必要になってくる。
 エイブルは,この小型培養装置の国内市場で4割のシェア(同社推定)を握るトップメーカーだ。創業は1949(昭和29)年。石油類の物性分析を行う機械装置の下請けメーカーとして発足した。
 同社社長の石川陽一氏が,勤めていた大手電池メーカーを辞めて,父の経営するこの会社に入社したのは1970年。当時は極端な人手不足の時代で,「父の忙しさを見かねて,何か手伝えることはないかと入社を思い立った」と石川氏は述懐する。しかし,入社した当初は当惑する。同社の主力製品だった分析機器の開発に必要な技術は,大学で電気化学を専攻した石川氏にとっては専門外。さらに,父からは「自分でできることを見つけろ」と突き放された。

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●発酵状況のモニターに使える酸素センサ