日経ものづくり トヨタ生産方式の真髄と新展開

第9回

多品種少量個別受注生産(2)

村山 明
中部産業連盟 東京本部 
主席コンサルタント
水村 重人
同連盟同本部 コンサルタント

多くの中小企業が属する多品種少量個別受注生産タイプの工場では,リードタイムを短縮することで,顧客の要望に素早く対応することが重要。今回は,リードタイム短縮を実現するための有効な方法である平準化生産や流れ生産において,より生産性を高める工夫について解説する。(本誌)


 注文のたびに個別に要望を聞く「多品種少量個別受注生産」タイプには,機械工場や板金工場など多くの中小企業が含まれる。前々回の7月号においては,この多品種少量個別受注生産タイプの工場が,トヨタ生産方式を導入する際のポイントについて解説した。
 目指すべきは「納期遵守」であり,それを実現するための「リードタイム短縮」である。7月号では,リードタイム短縮を可能とする平準化生産や流れ生産の考え方と導入手順を解説した。今回はさらに話を進めて,平準化生産や流れ生産を効率化する少人化や流れ生産における段取り替え短縮の方法,人中心の作業においても効率を落とさないポカヨケについて,具体的事例を交えながら解説する。

短期的な平準化生産の進め方
 平準化生産には長期的と短期的なものがある。ここでは,短期的な平準化生産の方法について以下に説明する。
 多品種少量個別受注生産タイプの企業が受注する製品には,顧客の要求リードタイムが長いものもあれば短いものもある。また,在庫をある程度確保しておき,受注があったときには即座に納品しなければならない製品もある。