日経ものづくり タグチメソッド

PQEマトリックスを使ったD-QMS

第2回
不確実な要素も事前に盛り込み
進捗に応じて計画を修正

齊藤 之紀
アジレント・テクノロジー R&Dプロセスコンサルティング

開発設計現場の設計品質マネジメントを強化する「PQEマトリックスを使ったD-QMS」。技術者の工数(Effort),目的とする成果物(Product)とその品質(Quality)といった3要素に注目することで開発設計プロセスを見える化し,それを可能とする仕組みを提供する。今回からはその適用と定着の方法ついて解説してもらう。(本誌)

 前回紹介したように,PQEマトリックスを使ったD-QMSは,開発設計部門の現場が設計品質の実現に向けて自ら目標を定め,それを達成していくための仕組みである。そこで,まず必要となるのが,製品開発の計画を作成することである。今回は,その手法について解説する。

不確実性が失敗の原因
 製品開発計画の作成方法について説明する前に,企画構想フェーズに起因する製品開発の失敗について考えてみよう。この種の失敗は,主に次のような形で露見する。
(1)製品の仕様とコストとのバランスが取れず,収束しない
(2)想定した要素技術が所定の品質を達成しない
(3)開発規模と工数を見積もれず,工数不足からプロジェクトが破綻する
 企画構想フェーズは,開発設計プロセスの中でも最上流に属する。ビジネス上の企画要求仕様と技術的検討を擦り合わせながら,マーケットに受け入れられ,かつ実現可能な製品の構想をつくり上げ,さらには開発計画に落とし込んでいく段階である。通常,この段階では,開発目標とする製品に適用する要素技術や要求仕様に不確実な部分が多く残されている。そのため,詳細な作業までを見通した開発計画を作成することが難しく,先に列挙したような失敗の原因となっている。
 新しい製品を開発していく以上,企画構想フェーズですべての要素を確定することは現実問題として難しい。従って,上記のような失敗を防ぐには,不確実な要素の存在を前提とした上で,それらを設計課題として開発計画に盛り込んでおくといった工夫が必要となる。